InAwaken DAWN-Ms レビュー
概要
InAwakenは新興の中華イヤフォンメーカー。市場で見かけるようになったのは2024年頃から。 「科学的な測定(測定重視)」と「独自のエンジニアリング」の両立を掲げていて、ドライバーの自社開発にこだわっている。
中華イヤフォンの大手輸出業者であるLinsoulが取り扱っている。
DAWN Msは11.2mmのDDを採用する、約8000円のイヤフォン。 シェルはハイエンドの3Dプリント技術によって整形され、医療グレードの樹脂を使用している。
宇宙っぽいデザインを持ち、紫色の振動板を持っていたりする美形イヤフォンである。
眺める
銀色のケーブル、滑らかな形状、フェイスデザインなどかなり美しい。
⋯⋯美しいんだけど問題がある。
まず、ケーブルが挿しにくい。ピンの挿入にガイドがない感じがする。 2pinのイヤフォンはもってるし、2pinの交換ケーブルも持っているけど、こんなに苦労したことはない。 ピンの角度もよくわからない感じで、半分くらい入るとちゃんと角度が決まって入っていく感じになる。
そしてもっと問題なのがイヤーピース。 製品は装着されていない状態で、2種類3サイズ計6ペアが同梱されている。 2種類の大きな違いは軸部分の硬さと長さ。
なんだけど、ノズルとイヤーピースの軸のサイズが合っていない。 明らかにノズルのほうが大きい。めちゃくちゃはめにくい。私は柔らかい青のほうを使ったけれど、それでも装着に20分ほどを要した。
SpinFit CP145ならすんなり入る。付属のイヤーピースで格闘するより、CP145を予め用意しておくのが正解かもしれない。 テストは付属の青のイヤーピースで行った。
テスト
「夢のアリア」「激流の如く」は問題なし。 「激流の如く」はダイナミクスをなめらかに表現できていて良好。ただフルートの音がちょっと刺さる。
「終焉のフィナーレ」で若干フルートの音に余裕のなさを感じる。 でも同じ音域のストリングスは平気。
「迷子の街」は余裕をもってクリア。 「flow」もかなりマイルドで聴きやすかった。
「ハマルの幸福」は低音にしっかりと迫力を感じるけれど、やはり若干マイルド。 ただ、サビ部分のヴォーカルが重なっている部分はちょっと怪しい。
「SELENiTE」はチャイムがほとんど聴こえてこない。マスクされてしまってちゃんと出ていない。
「Golf」は余裕を持って聴ける。かなり気持ち良く聴けるのでとても良い。 「Lyin’ Me」も良いので、メタルは得意かもしれない。
「Scent」は全体的には良いものの高音が若干刺さる。
「眠れない」は極めて良い。不調和な音楽を調和して聴かせるサウンドの表現を非常にうまく再現できている。 激しいバッキングトラックを悪目立ちさせず、ヴォーカルの重ね方の違いを綺麗に出している。
「Lost Child」はちょっと独特な聴こえ方。曲自体は残響ふわっふわなので音がわんわんしている中でいかに聴かせるかという観点になるのだけど、DAWN Msだと若干ドライに聴こえる。 「非常に聴きやすく優秀」なんだけど、曲の特徴をうまく再現できていないとも言えるので評価が定めにくい。
「真夜中プライスレス」は満点クリア。
「Hype」「Decay」は余裕をもってクリア。
総合: ギリギリでqualified.
所感
全体的にマイルドで聴きやすい寄りだと思う。 フラットよりもトゲを消すような要素がある。
このマイルドサウンドは結構な価値があり、幅広いジャンルの曲を混ぜたプレイリストで聴く人にとっては安定して聴きやすいというメリットをもたらすだろう。 「flow」が苦もなく聴けるというのはかなり大きい。
解像度も一応の合格ライン。制作時のモニターとして使えるというと微妙なところだけど、楽器演奏時のモニターとしては結構いいんじゃないかと思う。
ただ明らかに満点は取れない。 フルートが刺さり気味になったり、「ハマルの幸福」でヴォーカルが重なっている部分がクリーンに出ていなかったりするのが気になる。 8000円という価格帯だと期待値としてはこのテストプレイリストをクリアした上でひと味見せてほしいという感じがする。 「ひと味」は「全体的にマイルドに聴ける」という良さがあるので合格なんだけど、テストを満点クリアしていないのは若干期待値を下回った感じ。
地力の評価としてはESXよりも下。 ただ、「全体的にマイルドに聴けて疲れにくい」かつ「重低音サウンドの曲はちゃんと迫力をもって聴かせてくる」というのは大きな魅力なので地力や解像度の不足などがあっても「8000円の価値はない」と断じるほど悪いわけではない。 だが私の感覚としては、音を聴いた上で8000円出すかというとちょっと厳しい気がする。
ピアノやフルートの音がうまく飼い慣らせていない感じはチューニングの粗さを感じる。 全体的には中高域に明確な苦手なスポットがある感じ。 経験不足なのかもしれないし、検証不足なのかもしれない。 数をこなせば改善する面もあるにはあるが、どちらかというと人材を確保しないと進展しない部分でもあったりもするので今後よくなっていくかはちょっとなんとも言えない感じ。
ただ簡単に切り捨てられない魅力があるのがこのイヤフォン。 そもそもの話として8000円という価格帯は結構難しくて、ある程度聴けても「コスパが良い」とは判断しにくいし、8000円のイヤフォンで「バリューが高い」と言われるレベルに達しようとすると相手は3万円くらいするイヤフォンとの比較になってくる。 そもそもこの価格帯のイヤフォンというもの自体が微妙なのだとも言えなくもない。
別におすすめはしないけど、 「明確なよくない部分が足を引っ張っている」という話なので、このイヤフォンをとても気に入る人は普通にいると思う。 見た目もいいしね。
あとEDMばかり聴く人であれば弱点にひっかかりにくいので普通にいいと思う。
まとめると「光るところを持っているし独特な魅力もあるけれど、荒削りで明確な弱点を抱えたイヤフォン」って感じ。